みちのうえ
チェザーレ

夜はうえ。昼はしたを見て歩くのがよい。

ひかれたトカゲが一匹、ひからびていた。なぜか仰向けで。もしかしたらひかれた後、のたうち回っていたのかもしれない。肌がぴりぴりと痛い陽射しの中。彼のお腹のあたりはまだテラテラと生きていた名残を。そんなものを見たって、僕はちっとも悲しくなかった。

ひかれたトカゲが一匹、ひからびていたのを、帰り道僕はふと思い出して、帰る道を少し戻って、わざわざ彼をみにいったんだ。
彼はまた踏まれてしまったんだろうね。もうずいぶん日も落ちはじめてきた頃だった。彼はもっともっとひからびていて、長いしっぽもぱりぱりになってちぎれていて、お腹はぺしゃんこになって、もう彼は生きものの匂いなんてちっともしなかった。ただ、やっぱり彼は仰向けでね。それだけがちょっぴり悲しかった。


でもさ、踏んだのは僕だったかもしれないんだよね。だからなんだってこともないんだけれど。




未詩・独白 みちのうえ Copyright チェザーレ 2006-06-11 00:21:09
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