カボスチンキ
umineko

香母酢っていうものをいただいた。瓶入りの100%果汁。当て字かな?

すごく楽しみにしてて、細い口元のガラス瓶、栓抜きで押さえてぐっと開ける。どこかのおみやげらしい。大分?まああっちへんだよね。説明書っていうか、宣伝文句っていうか、ちり鍋にどうぞ、とか、焼酎で割って、とか、ちり鍋ってなんだったっけなー、とか、ぼんやり考えながら。

「甘味を加えて水やお湯で薄めて、美味しい飲み物に」みたいなのがあって、これをやってみたかったの。ちり鍋でも酎ハイでも薬味でもなく。

でさ。

できたよできたけど。マズい(笑)。香りがね。本格的すぎて、やっぱり薬味なんだよね。どうしても。餅は餅屋。猫は猫屋。カボスは香りを楽しむものなのだ。苦いもん。

そう考えると、オレンジのあの退廃的な甘さはアメリカって感じがする。まあいいじゃんなあって感じの、ある意味おおらか、ある意味投げやりな。マイアミの海岸にこっそり、難民のボートが朽ち棄ててあったとしても、ま、それもいいかってそんな国がピンポイントで好きだったりする。偏狭な差別国家。

一方のカボスはどうだ。端正な苦味。もっと背筋伸ばせよって、体育館の床に正座する剣道の朝稽古。まさに武士道ですね。でもマズい。これはいったいどうしたことか。

真夜中に冷蔵庫のあかりで、キッチンがぼうっと光る。美味しく見せるための逆光。たぶんどこかで意味があって、つながっていく。

今はいい。等列に事象を並べて、陳列するだけ。応接室の飾り棚の、あの脈絡のなさ。
解放する。すべての皮膚の小窓を開けて。今なら、空気にだってなれるだろう。

やがて世界とつながっていく。


散文(批評随筆小説等) カボスチンキ Copyright umineko 2006-06-10 10:28:40
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