著 辻 仁成 「ニュートンの林檎 上」より
海月

この本をご存知の方はいますでしょうか?
少しは名が知れていると良いのですけど・・
なんで、この本について書こうとしたかは、ある一台詞ひとせりふが印象に残ったからです。


「今君が話したことは、全てもっともなことだと思うけど、それはどれもこれも、どこかの批評家達が言ったことばかりじゃないのか。僕達に今大切なのは、僕たちの言葉をもつて、それを評価することなんだ」


多分、普通の読者ならば、この言葉の意味を深く考えずに流し読みをしてしまうだろう
だが、僕はこの言葉について深く考えている。それは紛れもなく僕が言葉を書いているからである。

僕が書いている詩は、全てもっともな事しか書けない、それは誰かの話しを糧にしているだけである。つまりこの一節が言うように、僕は批評家の言葉を真似しているだけになる。だが、僕は違う。
僕が書いているのは全て過去の出来事でしかない。僕は今に昨日を写しているだけでしかない。
そんな僕の書いていることは詩ではないと思われても仕方ないが、未来のことを書けばそれは予言書でしかない。
本当に詩人が書くべきことは、「今」を表す言葉だと思われる。
やっぱり、詩人に必要なのは、「独自の言葉を以って、詩を書くことである。」
僕はそう感じます。



散文(批評随筆小説等) 著 辻 仁成 「ニュートンの林檎 上」より Copyright 海月 2006-06-07 23:23:24
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