婚約者
奥津 強

そして 落ちた 朝日から
恋文が 洗われる
落ちた 朝日は 父なので
娘の 洗いきれぬ 服などに
圧倒されつつ 奇形の涙を流し
落ちた 朝日なので
沈むと 月になる

だが 娘は 月を 嫌う

ああ 娘よ
朝日が やって来た
今日も 曇り空は 流行病に
冒されている
お前も 認知症の 気があるから
戦争ほど 恐ろしいものはなく
叫ぶのだ
曇り空から の アンブレラは
お前を 老婆から 来世へと
つないでいる
恋文は 褪せているが
お前は 少女なのだ
少なくとも 婚約者ではない
お前の 曇り空から

ほら
降るだろう

さぁ
叫べ
叫べ

婚約者よ 


自由詩 婚約者 Copyright 奥津 強 2006-06-05 11:25:12
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