地獄のかたぎ屋レシピ
ジム・プリマス
ええか、今日は特別にワシの店のお好み焼きのレシピを直伝したるから、みんなメモを取るように。
まずはメリケン粉やけどな、これは薄力粉やないとあかん。中力粉やか使うたら最悪やな、外はガチガチで中がモサーとしてしもてな。タコ焼きするときもいっしょやけどな、メリケン粉はゆるめに溶かんと、うまない。外側が焼けてパリパリでも中が柔らかないとうまないで。
それからメリケン粉をやわらこうするコツは山芋をいれるこっちゃ。山芋を生地全体の二割くらい混ぜるとやわらこうなってうまいで。
それから大事なこと忘れとったけど、メリケン粉は水でといたらあかんで。ちゃんとカツオブシと昆布でダシとって、冷ましたのを使うんや。水でメリケン粉といたらお好み焼きちゃうで。
キャベツはいつも食べとる千切りよりも大きめに切る。どれぐらいて、勘でやれ、勘で。
ほな始めるで、鉄板がええ温度になったら、手ごろないれもんに生地を入れる、生地は緩めのほうがええで、これにキャベツをいれて、これを鉄板にひく、カタチは丸やな。
まず生地の外側に薄く切ったチクワをならべる。ほんでその内側はてんかすや、ほんでまんなかへんにイカを程よくちらす。そして、豚や、豚はコクの出る三枚肉を使うのが一番や。豚が真ん中にくるようにな。そしたら生地の真ん中をコテで掘る。卵の収まりがええようにな、卵をのせたら、紅しょうが、芝えび、イカ切りとたっぷりと降りかけてと。イカきりゆうんは、イカの燻製を細切りにして、粉みたいにしたやつや、最近のお好み焼きはこれがはいってないで、これがこげたとき、お好み焼きのおのええにおいがするのや。
そろそろ手早ようにやらないかん、コテ二つ使って、おいしょっと。ひっくり返して、はじから押さえ込んでゆく、この音と、この匂いや、これが食欲をケダモンにする。
焼けたらもう一回ひっくり返して、出来上がりや、ジュニア、ソースぬれ。小鉄、青海苔とカツオブシの粉かけてや。これでかたぎ屋スペシャルの出来上がりじゃ。
この後のみんなの意地汚い、このお好み焼きを奪い合う争奪戦は言葉にするのも辛い目を覆うものであった。かたぎ屋主人はこのことにいて、多くを語ろうとはしない。