WEB2.0時代のネット詩のあり方について
青色銀河団

私はインターネットで詩を書き始めてからまだ4,5年ですので、Niftyのパソ通時代の現代詩フォーラム等は知りませんが、恐らく現在のネット詩愛好者は何となくですが第4世代くらいにあたるのではないでしょうか。いったい現在ネットで詩を書いている人口はどのくらいになるのでしょうか。資料を持たないので正確な数値はわかりませんが、ある程度類推することはできると思います。

例えば会員数20万人(2005年4月29日日本経済新聞)のgooブログで、ブロガー検索を使って趣味が「詩」であるブロガーを検索してみたところ735人出てきました。割合にして約0.37%です。現在のネット人口を7730万人(総務省「平成15年通信利用動向調査」)とすると先ほどの割合をかけて28万6000人。
つまりめちゃくちゃ大雑把な計算ですが、現在日本にはネット詩人が約20〜30万人程度は存在することになります。(趣味の欄に「詩」と記入する人はおそらく読むだけでなく書いているだろうと仮定して)
そうすると日々ネットには20〜30万人の人たちが書いた詩が溢れていることになります。

一方、この「現代詩フォーラム」が成功しているのは、ポイント付与というワンクリックでのコミュニケーション・ツールの提供と、一つの投稿作品を基本単位にした様々な編集を可能にした設計にあると思います。片野氏のご尽力により作品と読者が結びつきやすい工夫が随所に見られる、とてもすばらしいシステムです。
しかしそれでも日々大量に投稿された作品がどんどん埋もれていってしまう現実があります。

話は変わりますが、ほとんどの人にとって、小説等のベストセラーを読んでみようと思うのは、おそらく他の人のフィルターによってふるいにかけられ残ったものは、自分が読んでも満足する可能性が高いからなのだと思います。
そういう中で、詩集はなかなかベストセラーにはなりにくい傾向があります。理由として考えられるのは、もともと詩の読者層が非常に薄いという点と、もうひとつ詩にはエンターテイメント・娯楽的要素が少ない点があげられると思います。
詩にFUNの部分が少ない分、読者の好みにはINTERESTがより濃く反映されるんじゃないでしょうか。私見ですがFUNはある程度他の人と共通する部分が大きいけれど、INTERESTとなるとそれこそ各人各様です。だから詩は好みが細かく分かれ、そのためなかなかベストセラーが生まれにくい。
ベストセラーにならないと現状ではその作品と出会う確率が非常に低くなります。従来ネットの「こちら側」ではコスト的な限界があり、ある程度のマスにしか対応できませんでした。大きな書店でも詩集はごく限られたものしか置いていないのは、在庫に効率性が求められるためだと思います。

読者と読みたい詩とのマッチングがうまくいっていなかったのが、今まで詩が置かれてきた不幸な状況だったといえます。

また、これはネットの世界でも同じでした。先ほど述べたように20〜30万人がネットで詩を書いていても、ほとんどが読まれることなく膨大な情報の中に埋もれていってしまいます。作品が再び読者と出会う機会はほとんどなく、読者と詩とのミスマッチの問題がここにも存在しています。

ところが今やWEB2.0  http://ja.wikipedia.org/wiki/Web2.0 の時代なのです。
ロングテール・ビジネス http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%AB が注目される中、ロングテールの最たる詩こそが今見直されるべきではないでしょうか。

例えば、もしテキストの内容を自動的に解析してラベル付けする技術があれば、先ほど述べたミスマッチはほとんど解消できるのではないでしょうか。膨大なネットの作品の中からその人の好みにあった作品を自動的にレコメンドしてくれるサービスがこの技術で実現可能な気がします。いわば「読みたい人にちゃんと届くシステム」の実現。詩の表現形式がテキストベースであり、なおかつ一単位の分量が比較的少ないのでこのシステムにより乗せやすいのではないでしょうか。

実現のためにはかなりの技術的学問的ブレイクスルーが必要だと思いますが、なんとなくできそうな気もします。(この辺はシステムや言語学等に関しては全くの素人なので無責任極まりない発言です。おそらくGoogleのアドセンスというサービスはこれに似た技術で成立してるんじゃないでしょうか。)

そんな感じでネット詩にあったらいいなあと思うサービスをロングテール・ビジネスのリンク先にあるビジネス例に則してあげてみますと

[フィルター]
テール部分をフィルターして需要と供給のマッチングを助けてくれるサービス。「読みたい人にちゃんと届くシステム」とかレコメンド機能なんかも入るのかな。

[アグリゲーター]
ネットの詩集書店。在庫を持たないためロングテールにも対応できます。またAMAZON.COMのように他の人のレコメンドなんか載せたらいいんじゃないでしょうか。

[製作ツール]
ずばり自動詩作ソフト。文章の解析が可能なら逆に生成も可能なんじゃないかな。

[製作者]
これは例えば作者が自分の詩の広告を出すようなこと。詩集というモノがなくても自分の詩をより多くの人に読んでもらいたいって欲求は持ってると思う。あるいは広告を出して希望者を募ってまだない詩集を買ってもらい、一定の購買者が集まった時点で実際に詩集をつくる(これはもうどっかであったような)。これを「読みたい人にちゃんと届くシステム」の中に組み込んじゃうとか。

まあこういう夢のような、情報そのものが淘汰されてゆく仕組み、混沌から秩序が自動的に形成されていく仕組みができたらいいなあと思います。ネットだからこそ実現できる従来にはなかった詩の新しい流通形態が可能なのではないでしょうか。

ネット詩ももうそろそろ、ネットの「向こう側」で完結してもいいのではないでしょうか。
ネットの「こちら側」の権威やら「こちら側」への還元とかを経ることなく、ネットの「向こう側」の経済圏のなかで、生まれ・選別され・流通し・消費されてゆく。そういう仕組みが近い将来できてもおかしくないと思います。

下手くそな文章を最後までお読みいただいてありがとうございました。


散文(批評随筆小説等) WEB2.0時代のネット詩のあり方について Copyright 青色銀河団 2006-05-14 23:02:54
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