裏側
アンテ


                      24時 @ハト通信

あなたは得意げに
ハサミで細長く切った白い紙の
端と端を
一度捻ってから貼り合わせる
メビウスの輪
というのだそうだ
平面上を真っ直ぐに進みつづけるうち
いつの間にか裏面にいる
などと得意げに語る様子が
滑稽で
笑ったら叱られた

肝心な前提条件を
あなたは忘れている
紙は限りなく薄くなければならない
すべての物体に
厚みがあることを
思い出さないように
気づかないように

自然界に
メビウスの輪が存在しないのは
だれも必要としていないからだ
こともなげにそう言ったあなたが
ふと
透き通って見えた

月の地球から見えない面
眼球の裏側
どんな風に観測点を定めても
見えない部分が必ず存在する
紙の裏面
も所詮そんなもの
第三者
には造作なく見えることの意味を
知らない者だけに
ありがたみが通じる理論なのだろう

輪になった紙を掴み取る
二つに切り裂く

なににも必要とされない物なんて
この世にはたくさんあるのよ

哀しそうに首を振った
あなたの声が
鼓動のたびかき消される

またひとつ
細長い紙を作って
あなたは輪を作る

二度捻ると
もとに戻る

三度 四度 五度

あなたは捻れながら
透明になっていく




未詩・独白 裏側 Copyright アンテ 2003-07-24 02:01:45
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