星屑の遊戯
エラ

雨に打たれて風邪をひきたいのだけれど、
それには条件がそろわなくっちゃいけない。
まず、しん、と静まった部屋が必要。
お隣さんの喘ぎ声なんか、聴こえたら台無し。
それと、私にポカリスエットを買ってきてくれる恋人が必要。
コンビニの四百円もする透明な傘をさして、
自動販売機で買う、ペットボトルのポカリスエット。
こくこくと、液体を喉に通して
私は熱を出すから、それはいつもより甘くぬるい飲み物になって、
混濁した意識は、深く潜っていって、
こんびろうど色の波に飲み込まれた先にサンセットオレンジが見えたら、
テレビの喧騒を脳の片隅で生かして目を瞑るのだ。


ざわざわと、部屋を犯していく煤の様な夜には、
明かりをひとつ点けて眠る。
だって、侵食されたらたまらないでしょう。
チェコアニメの映像を、繰り返し繰り返し、観ている様な感覚。
フィルムが絡まって、映像が乱れたらお仕舞い。

カラカラカラ、カラカラカラ、

自分が宙に浮いているような、感覚がしてならない。
こんな日に誰かと話をしてしまえば、
何か重要な世界の秘密について、話してしまいそうでならない。
口を摘むいでしまえば、聴こえるのは踏み切り音だけ。

カンカンカン、カンカンカン、


希望的観測は、見つかりそうですか。

いいえ、まだ。

そう、それは残念です。

そう、残念でなりません。

あすこに見える、雪灯はなんでしょうか。

あすこにいるのは、子羊の一等星です。

可愛らしいですね。

可愛らしいですと。

え、なにかいけませんか。

ええ、あいつは人を喰うのです。

そいつは、恐ろしい生き物だ。

見なかったことにしよう。

見なかったことにしよう。

 
しんしんしん、

しんしんしん。 



散文(批評随筆小説等) 星屑の遊戯 Copyright エラ 2006-04-17 01:36:09
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