Yへ
haniwa

留守番電話に入っていたYの声
「あ.うん,ごめん……死にたいです.じゃあね(笑)」
そしてあわてて書いたようなメール
『留守電に変なメッセージ残した.気にしないでくれ』
電話をかけなおすとYは酔っ払っていて
僕らはいつものように自虐的に笑う

「人生は長すぎるよ.この一秒一秒をどう処理していいかもうわかんない」

親戚のおばあさんが死んだ
誰も受付をやる人間がいないので
僕と母が席についた
身内以外の受付カードは3人分しかたまらなかった
泣く人は何人かいたけど
僕はその人のことをほとんどおぼえていなかったので
泣けなかった
すべてはたんたんと進んでいった
通夜振舞いの席ではどこにでもあるようなオードブルが出た
僕と母はそれを少しだけ食べるにとどめ
家に帰ってからワインをあけて 用意していたネギトロ丼を食べた

ボクニイキルモクヒョウヲクダサイ
アツクナレルナニカヲ

じゃないと 死んでしまう

葬式は卒業式に似ている
多くの人は春先に死んで
それがどんな先輩だったにせよ 在校生は全員整列して送り出す
校歌斉唱
みんないい人
泣く人はいい人


Yよ
僕らは卒業式を望まない人種だ
泣くのも泣かれるのも恥ずかしいし
なんだかぜんぶがむなしいんだ

だけど
つまらない学校で
つまらない勉強をして
ありきたりな人間関係と
退屈な日常

思い返せば すべてが愛しい
それだけはほんとうかもしれないね


学年があがるようにさりげなく
死んだり 絶望したり
あがいたり 何かをみつけたり
そうやって生きていきたい
ぜんぶありふれてるんだ いまはなにもないけれど
きっと今日にでも死ねる きっと今日にでも生きれる
卒業式なんてあくびをかみ殺すだけの時間だ
我々はそういうふうに生まれついた人種なのだ


未詩・独白 Yへ Copyright haniwa 2006-04-02 17:53:11
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