美しい残像                        
前田ふむふむ

                    
あなたがいて
華のようなあなたがいて
あなたが動くと、わずかにかたちが揺れて、
震えるように波を打って
ゆっくりと動いてゆく。

あなたのかたちは、いつも美しく揺らぎながら、
そっくりそのまま、残っている。
それは、消え去ることなく、
眼を瞑れば、深遠なる内部へと、
鮮やかに、あなたのかたちを刻んでいる。
あの、暖かかった日々の、
幸せだった光景は、甘く、切なく
いつも、あなたが好きな、
海の情景に限りなく結び合う。
その潮のかおりのする、透明なあなたの残像が、
懐かしい時の場所と重なりあい、
すがすがしい空気の薫る爽やかさで
わたしのこころにとけてゆく。

もし、永遠という言葉があるならば、
記憶を運命が気まぐれに奪い取るまで
わたしのこころの中に生きている
あの美しかった情景は、
世界と同じ質量で、
均衡のとれた天秤の上にあるだろう。
まばゆい夢の美しい残像として

いま、あなたがいて
華のようなあなたがいて
変わることがない世界が、
いまも生命の朝を
描いている。



未詩・独白 美しい残像                         Copyright 前田ふむふむ 2006-02-28 23:57:12
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