上海1986
たりぽん(大理 奔)

僕の消えていく闇の名前
石炭ボイラーの匂い
江浦路の路面電車が踏みつける
レールの間で腐っていくうりの皮
入り口だらけの逃げ場所

擦り切れた人民幣
二十五元五角の片道切符
架線の短絡火花ショートスパーク
照らし出される視線
水銀灯の青白い体温

レールの間で腐っていくうりの皮
タクシーの後部座席の
破れた隙間
古ぼけた回転扉の軸受け
砕かれた日々

僕の消えていく闇の名前
石炭ボイラーの蒸気
魔法瓶の開水の温度
霧になり街に満ちて
すべて

だからみえない






未詩・独白 上海1986 Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-02-26 00:38:47
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