記憶ちがい 1
AB(なかほど)

  

今朝は
カッコーの鳴く声も聞こえてきた
ので
お昼は
白山の蕎麦屋にでも行こうかと思った
確か一度行ったことがあるよね
坂を下りた角にある
そこからしばらく西に行くと
製版所やら印刷所やらが並んでいて
今にもボルトの外れそうな音が
夕方まで続く
そのブロック塀の向こうには
大学付属の植物園があって
スケッチブックを片手に持った君が
あの日もなにも描けずに
あー
とカラスの鳴き真似をして
帰る道
やがて君は
いつでも一人になれるんだよって
ふっ
  って遠くに行ってしまった
あれから
いくつもの季節を通り過ぎたつもりもないけれど
日々の生活は僕を追い越してゆく
こんなに街中が肩寄せ合って生きてるとこで
何かにしがみついてる僕でも
ほんとに帰るとこなんて判らない
まま
どこかで
あー
と鳴いている気がする
とりあえず僕も
あー
と鳴いてみる




  


未詩・独白 記憶ちがい 1 Copyright AB(なかほど) 2006-02-02 22:46:03
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