「ブラックジャック」と「Dr.キリコ」はどっちが正しいのか。
和泉 誠
生きる事が苦痛以外の何者でもない時、
そこに生きる意味はあるのだろうか?
その答えを私は知らない。
健康とは何者にも代え難い財産である、有名な格言である。
その通りだなと私は思う。
私はとある事情で一日4回精神安定剤を大量に服用し、
家から一歩も出してもらえなかった時期があった。
その時はまさに地獄だった。
精神安定剤を大量に服用すると、起きていることが苦痛になる。
ちょうど睡眠不足に近い症状になる。耐えずイライラしていた。
けれど一日12時間以上寝ていたため少しも眠くない。
どうにかしてこの苦痛から逃れたかった。
けれども、逃れる事はできなかった。
おまけに外にも出してもらえないから気を紛らわす事もできない。
思い出してもらえれば分かるかもしれないが、
睡眠不足の時は何をやっても楽しめないし、
絶えず気が散って集中もできない。
そんな時間が意識のある間ずっと続くのだ。
私は檻に入れられたライオンのように、
絶えず不機嫌そうに家の中を意味もなくただグルグルと
時にはライオンさながら意味もなく吠えながら回っていた。
私の安らぎはただ眠る事だけだった。
はたしてそんな自分に生きている意味があったのか、
幸い、医者の指示で薬の量は少なくなっていき、
最後には日常生活が普通に送れるまでになった。
けれども、もしもあれが一生続いたなら。
悪夢より辛い現実なんてこの世界では十分に起こりえる。
たとえば私が癌になってしまったら。
たとえば私が年をとってしまったら。
もう誰にも救う事はできない苦痛の中、
ただ苦しんで苦しんで、そして最後には死ななければいけない。
そこに果たして生きる意味があるのか。
「おじいちゃんおばあちゃんには
少しでも長生きしてもらいたいから」
病院の集中治療室。点滴とチューブだらけの老人。
一体それは誰のため?一体それは何のため?
その答えを私は知らない。
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