師走に咲く
月音
吐く息がすぅすぅと白くなるので
ああ そうか と合点がいく
駆け込みで無意味に アスファルトが掘り返され
交通誘導のおじさんは 震えながら旗を振る
工事ランプの赤い明かりは
すれ違い越しのイルミネーション
くつくつと煮物をつくりながら
借りてきたビデオを 台所から眺めて
テレビ欄が特別番組で埋め尽くされるので
ああ そうか と納得する
振り返るばかりの十大ニュースは
塗りこめた油絵のように ついさっきの事件を忘れる
数年ぶりの雪が積もる電気塔は
振り向きざまのツリー
ねぇ さっきのシーンのあとどうなったの?なんて声をかけて
とりあえず紅白が演歌になると格闘技にチャンネルを換えて
今年は
なんていう呟きが
来年も
なんていうささやきになって
お蕎麦をゆで始めて ねぎを刻んで
温泉も行きたいねって どんぶりを温める
これからも という
あなたがいる という
まるで
花が 咲いたようだ
雪にしっとりと落ちた
一粒の南天の実のようだ