【批評ギルド】 『愛の22』 瓜田タカヤ
Monk

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「ビラビラの花内部に侵入しました、館長!」
「なにっ、浣腸だと!?」

燃えた。批評でありながらこの「愛の22」に対抗すべく右膝備え
付けのデスブリンガー'2003を発動させようかと思った。今でも
迷っている。家で待っている子供たちのことを考えれば至極まっと
うにこの「愛の22」を各段落毎に評価し、一旦分解したのち再度
の構成、そしてマクロからミクロへ、非常に宇宙的ですねこれはか
つて渡辺美里が「ムーンライトダンス」で表現した宇宙的であると
同時に夕暮れ帰り道でもある、つまりは一方の写像を一方の実態に
重ね合わせることによる並行存在的なアプローチが見られ、ちりば
められたアイテム関しては懐かしくもありTシャツに描かれるポッ
プさも兼ね備えている、いわゆるモノシリック(一枚岩)では味わえ
ないマイクロカーネルの楽しさを改めて認識する作品だった。とい
う文章を続けていくべきだろうが「愛の22」はわたくしの小宇宙
(コスモ)を揺り動かすので拳を交え、あえて戦ってみたい、それが
男というものだという気持ちである。たとえそれが批評としてふさ
わしくなく、原稿料をカットされるとしても、だ。(そもそもギル
ドの給金はミスドカードで支払われるのでファンシーお弁当箱をい
くらもらってもそこに詰める米が!米がない。ひどい!)

しかし君たちは謎を知りたがる。「愛の22」にちりばめられたト
リックを解き明かす次号解決編への期待がある。犯人はおそらくい
ないであろうことは薄々わかってはいるだろうが、それでも散りば
められた愛の欠片をつなぎ止めて手に触れてみたいと考えるだろう。
わかった、いいだろう、僕の子供のことは忘れてくれ。ハッピー
ターン(おせんべい)をとりあえず舐めるところから始める僕の子供
のことは忘れてくれ。これから愛に触れてみようと思う。散りばめ
られた愛の欠片をつなぎ止めるため、月の裏側へ堕天使の唄を奏で
ながら、湖面に揺らめく光の記憶を集めにゆこう。お尻かゆい。



ビラビラの花内部は子宮、コビトタクシー模様は精子。失われてし
まった自殺者の頭脳はふたたび花の内部で新たな生命肉体と結合す
る。生命の愛だ。輪廻転生だ。無念の自殺者と妊婦の間には語るに
尽くせないドラマがあったのだった。
丘の滑り台から流れた雪解け水の春への愛は受け皿もなくただ流れ
てしまった。誰も受け入れずに流れるだけ。しかし洪水にはならな
い。ただ存在する愛。誰の興味にも止まらない。
恋人たちはカマキリの生殖器の話をした。淡々と。文字放送のよう
に。これが彼らの所有する愛の秘密だ。どうしてカマキリの生殖器
の話ばかりのするのですか?尋ねた人々に対して彼らは逆になぜそ
んなことを聞くのだろうと思うのだった。
再びビラビラの花びらはもうエロい。雪の結晶越しだとかもう頬を
染めてしまえ。君たちは頬を。

ねえカチョウサン!
うるさいよ、君は。おまえは本当にカタカナでしゃべる奴だ。こう
いうのは知っているぞ。あたかも人が発した温度のある言葉のふり
をして精巧に作られた電子ヴォイスで、うちの上司の使っている留
守番電話サービスはかける度に腹がたつ。リカちゃん電話か!マタ
オデンワクダサイネー。しない、二度としない。もっと。愛の。こ
もった。暖かい。お母さんのような。「わたしが握りました」とい
うおにぎりのような。やはり既製品か!違うのだ。もっと。ほら、
わかるだろ?
イイカラ、カイナタイヨ、オナカイタイヨ

愛はどこにあるのかわからない。ピラニアTシャツを着たままひき
こもりたい。外に出ても上を見ても下を見てもほしいものはない。
犬が鳴いたところでそれが本物かどうか疑うことしかできない。
肉厚の人食い花。ひどい彩色だ。間違っても店頭で売れることはな
い。が。特定の人間を惹く絡め取る悪魔の彩色だ。たとえ僕の母親
を奪った、僕の愛を奪ったのがその花だとしても憎むことはないだ
ろう。むしろ一緒に飲み込んでしまってくれ。だってここにはない
のだ。愛は。

ねえオニイサン!
ってまたおまえか。俺は課長だ。中間管理職だ。それなりに昔は
やったもんだ。昔は、な。今度は思い出話か。レトロノスタルジー
か。まぁ懐かしいがな。ストリップ小屋とか知らんだろう、君らは。
よく行ったものだ。なぜか出口のところで手品セットやスプリング
が階段降りるヤツ、なんつったっけあれ、そうトム・ボーイ、少年
トムだよ。あれ売ってるんだがな出口のところで。ストリップ小屋
来て、帰りに子供の土産買えってことなのか知らないが。初期のデ
ザインに戻るカルピスってのもすごいな。どんな仕掛けだい?教え
てクレよ、水買うから。

しかし僕はもうすでに母に追いつくことはできなかった。ずっと遠
くに離れてしまった。距離のことを考えると悲しくなってしまう。
愛はそんなところにあった。距離は遠く離れてしまってあとは忘れ
てしまうだけのそんな位置に愛はあった。どんどん忘れていくよ。
すでに新しい身体を手に入れて性能は格段によくなったがもう昔の
僕ではなくなったよ。いらないものはどんどん忘れていくよ。いら
ないのだろうか。

ねえそこのニイサン!
いや、いらない。それはいらない。母さん、次々と新たなセックス
産業が僕を塗って塗って塗ってゆくよ。大量のニシン風呂の中の女
たちに欲情していくよ。ニシンの躍動にも。この間、接待で行った
んだ。金持ちの考えることは本当にわからない。あいつらはより高
性能な身体を手に入れ、常に僕たち一般人には理解し得ないロジッ
クを生み出しては「どうかね?」などと半笑いでなでつけるための
ヒゲをたずさえやがっていらっしゃる。

閑話休題
結婚しました

恋をして結婚した。恋は愛になった。ハマチはブリになった。妻は
この話をすると少し怒り、子供たちは魚をよく食う。小さい頃から
魚を食わせていたのだ。新たな愛はここにあった。僕も妻の内部に
まだまだキスしたいが今は小鳥ちゃんたちにゆずろう。愛着のキス
はしたいときにしたいだけするのが健全だ。僕の愛情は待っている
ことができる。少し安心したのだ。帰ってくれば妻はまだそこにい
るだろうし、僕はかならずここへ帰ってくるからだ。
母さん、もう忘れましたが母さん。そっちはいかがですか。タバコ
はうまいですか。僕はもうすっかり大人になり、セックスを何十回
もしました。



ということで僕は十分楽しんだ。
工夫次第で十数通りの楽しみ方がご家庭で手軽に。
お子様の知育教育にも最適です。



散文(批評随筆小説等) 【批評ギルド】 『愛の22』 瓜田タカヤ Copyright Monk 2005-12-11 04:04:40
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