屹立するもの
青色銀河団

ここはひとつ青い桃になったつもりで屹立するもの
地の香りのするちいさな神様のように屹立するもの
土のなかから這い出る虫のように屹立するもの
遠い星々へ飛び立つように屹立するもの
秋の幻想の花崗岩のなかで屹立するもの
氷の独奏者が愛する女のように屹立するもの
家出さながら街のかたすみで泣くように屹立するもの
中毒患者の思い描く七色の海で屹立するもの
舌に生える震える苔のようにうつくしく屹立するもの
風呂場で凍える天使の羽根のように屹立するもの
やさしさに腐り始める母親のように屹立するもの
腐敗した信号機のように屹立するもの
ひびわれたドアのむこう音もなく屹立するもの
冷酷な地平線その形状のままに屹立するもの
楡の葉かげにとまる怠惰な鳩のように屹立するもの
殺意の自由市場において不作為に屹立するもの
ガラスの欠片に書かれた遺書の文字のように屹立するもの
硬い土地の戸の隙に咲く花びらのように屹立するもの
耳まで情熱で満たされた虚構の未来のように屹立するもの
滅びる裸体のための都会の一部屋で屹立するもの
希望のなか神経を衰弱させて屹立するもの
恋人が持つ蝙蝠傘に隠された秘密のように屹立するもの
正午の大時計のように屹立するもの
ほたるのように屹立するもの
象の眠りのように屹立するもの
蛇行する夢に屹立するもの
枯れた紫陽花のように屹立するもの
生きる世界を恐れて屹立するもの
一切のわたしの終わりに屹立するもの
一切のわたしの終わりに屹立するもの
一切のわたしの終わりに屹立するもの



未詩・独白 屹立するもの Copyright 青色銀河団 2005-11-10 00:56:05
notebook Home