生身
唯浮

蝶の軌跡は有刺鉄線か
剥れゆく皮膚を剥れるままに
見るもの見るもの
瞼を伏せ、視線を逸らし、
目を両手で覆いたくなるような
垢に塗れた赤黒いそれ
剥き出したままに
海の風が轟々と
悲鳴は掻き消され
蝶は嗜虐の輝きをもって
飛び続けている
野に牧歌を鳴らす羊の群れか
海に子守唄を紡ぐ人魚たちか
境に立って泣いている
赤黒く腫れ上がったそれ
渦潮の渦に向かって
行方の知れぬ蝶を追う


自由詩 生身 Copyright 唯浮 2005-10-12 03:01:08
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