夕陽と犬と

お父さんまたお話して
子供のころの犬の話

しんだ父におねだりして
私は旅に出てゆく
お父さんの記憶の中へ

ジャノヒゲ揺れて
オオバコ踏んで
大きい夕陽とお父さんと犬
風は紫オレンジに染まり
こんなきれいな段々雲
初めて見る

お父さん少年だったのね
腕の産毛が風になびいて
半ズボンから健やかに膝
少年の色をして
私に似たお顔で
犬を呼ぶ

道は、道は橙のレール
草むらに隠れたら
犬は困って鳴いちゃうの
太陽が見えないよ
笑顔だけで

お父さんと犬が
じゃれて転がるから
私もでたらめに
原っぱを泳いだ

ね、お父さん
お父さんがオトウサンのまま
私がコドモのままで
ずっと時間が止まるのは
だめ?



流れ流れついた血のような
ぽっとりほとんだ血のような
夕陽と犬とお父さんと私
くぅんと犬が首を傾げた


未詩・独白 夕陽と犬と Copyright  2005-10-04 23:58:07
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