バカとトランクス

「30になってもお互い一人だったら、結婚しよう」

テレビドラマでよく聞く台詞を残して彼は出ていった。


彼が残していったもの
(わざと置いていったのか・・?)

くさいセリフ
脱ぎっぱなしのトランクス
相棒の見つからない靴下
食べかけのチーズ蒸しパン
ブラシについた髪の毛
吸いかけのタバコ

とりあえず
セリフは異臭を放ちながらもただよっている中
髪の毛を捨て
タバコを消し
チーズ蒸しパンの残りを食べ
靴下とトランクスを眺めた

不思議と悲しくはない
付き合って1年4ヶ月
順調だった(ように思う)
突然捨てられて
絶望感に襲われるまで
もう少し時間がかかるようだ。


靴下をつまんで
少しためらう

今は相棒がいないが
しばらしてこの部屋の片隅から
出てくるんじゃないか・・・

今は一人だけど。


急に靴下と自分が重なって
さっきまで感じたことの無い
敗北感がわいてきた

なんとなく自分のこれからを
占えそうで
しばらく置いておくことにする。


脱ぎっぱなしのトランクス・・・・


奴は今
ノーパンなのか・・・・?


「最後だから・・」

とゆう言葉で許してしまった私もバカだが
はかずに帰る奴は 
そうとうバカだ

さっきまでの敗北感は薄れ
ほんの少し
優越感がわいてきた

ノーパンの男がドラマで吐く台詞を言っても
何のかっこよさも生まれない。


そもそも30まであと8年もある

その間
色んな人と付き合い
何人かに抱かれ
捨てられ捨てて
きっと
そうこうしている間に
結婚できている
(はず)

奴も私もお互いを忘れ
そんな言葉も忘れ
幸せになっている。
(と思う)



灰皿に残ったタバコの吸い殻は
まだ少しくすぶっていて
残り香に私は包まれた

それは数分前の出来事なのに
懐かしくて、


私はトランクスを握り締め
部屋を飛び出した


未詩・独白 バカとトランクス Copyright  2005-09-25 00:45:05
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