歩道橋の上で
ゆきお

駅前の歩道橋の上で
8歳年上のあなたの唇に
指でそっと触れて
すっと横に動かしてみる

黒ぶちの眼鏡の奥の
あなたの瞳が
一瞬困ったような
そんな風に笑ったように見えた

私の髪をくしゃくしゃにして
かばんを持った手を引っ張った

あっ・・・と驚いて
一瞬あいた口から
少し歯が当たったのかもしれない
カチッという音と
やわらかい
あたたかい
あなたの唇が触れていた

逃したくなくてまわした腕を
するりとかわしながら
もう一度触れた唇

「困った奴だ・・・」

それ以上のことをきく勇気も何もなく
でもあきらめてしまえるだけの勇気もなく

ただ涙をこらえながら
何度目かのあたたかさを
覚えておく方法を
ずっとずっと考えていた


未詩・独白 歩道橋の上で Copyright ゆきお 2005-09-18 18:24:44
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