ころがるちゅうしん
カンチェルスキス
得意げにまわってる
あの子は
何も話せないから
おどけてるだけなんだよ
水色の音楽の真ん中
はしゃぎ過ぎて
黄色のスカーフが
ほどけて
落ちたよ
拾うのも忘れて
お家に帰ったのです
ビー玉を机に四つそろえて
ふぞろいの前髪を
うつした
ちょうど雲の切れ間から
お日様が顔を出し
意外とつめたかった五月の朝の水を
思い出したのです
何度もさわっては
ぷくぷくした指の先から
かわいいお豆さんが
出てくるのを
待っている横顔は
しんけんなのです
++++++++
あわてても
ないのに
ぬいだ靴のかたほうが
ひっくりかえっている
花に水をあげたあとで
ねむる
川のせせらぎの底
ころがる小石のように
ころころした音が
やがて聴こえてくるのは
自分のひみつを明かすかのように
しずかになっても
ころがり続けている
あの子のこころのちゅうしん
ゆえなのです。