落陽の標本箱
青色銀河団

静かな風が吹き始めます。感情は涙の滴り。イバラの花びらはぼくらを遠くに抱きます。ようやくちいさな春がきましたが、ようやくきたちいさな春は、白い舗道の悲しい小学校に続いていました。香りの道にそって、夏の紙飛行機を飛ばしました。落陽は標本箱の中に大事にしまいました。

終わりのために始まりはあるのです、と先生は言った。ずるい先生。新しい鑵のようにいつだってぼくらの生活は淋しいのだから。もう夜明けは透明な凍土になりましたよ。別れのために歌ううたなのですから、鳥篭は空っぽなのですから、渦巻きの空へはもう戻れません。

隠し持ったナイフは瞬く夕陽のような匂いがします。星は方位を告げ、空は深い信仰に導きます。冬の意味を問うてはいけません。都会に眠る者の羽はいつだって濡れていますから。食物をたべると静かに血を流します。その傷口は古く細くどこまでも続いています。

雨の日には小鳥の原石を探そう。いつしか落陽が溢れてわれわれの生活がずぶ濡れになるとき、羊水の底は人間の岸堤です。海は叫ぶ石灰の書物です。表象の夏が過ぎても、小さな卵は、まだ月の光を浴びているでしょう。

ささやかな恐怖だけが生きる糧なのです。朝のように冷たい水脈を泳ぐと、うれしそうに骨は響きました。



未詩・独白 落陽の標本箱 Copyright 青色銀河団 2005-09-14 00:48:32
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