こんなものを書いてきた 01
Monk


僕が初めて書いた詩は高校の漢文のノートの最後のページに書かれ
ていました。暇だったんだと思います。しかしこの漢文ノートを
うっかりある女の子に貸してしまうとは。

その日、私は今まで絶対にしなかったミスを、した

有馬君にジャージでダイブなわけです。宮沢雪野、一生の不覚です。
気づいた瞬間、猛ダッシュで大事なあの娘を奪い返しに行きました
が時すでに遅し。「いや、なんか意外。あはははは」とおっしゃっ
てましたよ。そりゃそうです。僕はそのころ、近辺の族(ゾク)とい
う族をうち破り伝説のヘッドとして恐れられ、日々の生活といえば
喧嘩、飯、喧嘩、喧嘩、ファミコン(1時間)ですから。意外どころ
か圏外です。彼女の笑い声が心なしひきつり徐々にフェイドアウト
していくのもうなずけるってものです。というより僕の存在自体を
フェイドアウトさせてくれ。

その後しばらく記憶がありませんが、気が付くと漢文のノートは焼
却炉で焼かれていました。ずいぶんと陽がかたむくのが早くなり立
ち昇る煙と西の空を見上げながら、ああもう夏も終わりだなぁと思
いました。
なので現物はもうないんだけどそこに書かれていた詩のタイトルは
「青」といいます。海の青と空の青は違うの?どっちが本当の青な
の?ああ、とかそんな内容です。いたたた。頭痛がします。あと
「才能」というタイトルのものもありました。才能を測る定規を
持った連中め、やめてよ!やめてよ!そんな悲しいことは、って感
じでした。別の意味でひどく悲しくなります。たしか全部で五編く
らい書いてあって、みんな似たようなもんでしたが、とりあえず僕
は漢文ノートを廃棄し、詩はもう書かなくなりました。たぶん、何
の得にもならん、と思ったからでしょう。
ただ文章を書くのはわりと好きだったのかもしれない。いや好きと
いうより金もかからないし、絵や音楽と違って文字が書ければ書け
たからというのが正解ですか。詩は書かなかったけど妄想体験記を
青少年のための雑誌(エロ雑誌)に投稿したり、それがクラスで人気
をはくし、授業中にも回覧され、職員室に呼び出され、スリッパで
ビンタされたこともあります。スリッパでビンタされたのは初めて
でした。

 * * *

大学の頃は友達のバンドの歌詞をたまに書きました。世の中でヒッ
トしている曲の歌詞を見ながら「これは僕でも書ける」と思ったわ
けで、書けることを確認するために書いてました。そう考えると最
初の「青」にしても妄想エロ投稿にしても動機は同じで、書けるこ
とを確認する作業のような気がします。このとき書いた「張り込
む」という詞を月間歌謡曲って雑誌の歌詞道場コーナーみたいなの
に投稿して「アイドルが歌う曲じゃないよね」というコメントをも
らいました。そりゃそうですね。この歌詞は、今でいうところのス
トーカーの歌で、毎晩君の部屋を張り込んでいるっつう話です。ろ
くなもんじゃありません。屈折した愛情表現やアブノーマルセック
スに対し寛容であることがカッコイイと思ってましたね。この曲は
おおむね評判よくなかったです。簡単に言えば「ひいた」というこ
とです。ちっ、世の中まだ僕についてきてないなぁと思いました。
まぁ青少年によくある病気です。一回、女王様にムチでたたかれる
といいと思います。おのれの無知がよくわかりますから(うまい)。

小説も書いてましたが結局、小説は「合わない」と思いました。書
いてる途中で飽きてしまいます。自分の中ですでに完結している話
を文章で黙々となぞっていくのに耐えきれないわけです。頭の中に
浮かんだことをすぐに文章化してほしい、お願いドラえも〜ん。
まぁドラえもんがいたら、もしもボックス出してもらってあとは
早々に未来へ帰っていただきますが。
で、ここで詩なわけですよ。詩は短い、これくらいの長さなら耐え
られる、小説は長い、こんな長いのハイんない!(えー今でも途中
で脱線しないと飽きてしまうからであって、特に下ネタは好きでは
ありません)。で、まぁ最初はそう言ってもすぐに慣れるさ、ダメ
絶対無理、無理だから!(重ねていいますが下ネタは好きではあり
ません)じゃなくて詩だったら飽きずに書けると思い、再び詩作の
世界へ戻ってきたわけです。元々5作しか書いてねーじゃねーか。

 * * *

仕切り直しで初めて書いたのは「夕方校庭ペンギン」。これは現代
詩フォーラムにも投稿してありますが、本人もまぁいいんじゃない
のと思ってる作品です。作中で「僕」は小ずるいペンギンにしてや
られるわけですが、最後に「こんな大人に僕はなりたい」とつぶや
きます。成長しましたMonkさん。あれほど大人への反発を詩に書き
散らし(たかが1,2作ですが)、真夜中に校舎のガラスを割っては貼
り割っては貼り、盗んだバイクをまた盗まれたあの頃から、立派に
小ずるい大人に成長しました。
大人のずるさっていうのもかわいげがあるというか、かわいげがあ
るように書いてみようということでペンギンを持ち出してきたりし
てるわけですね。この頃から僕は詩の投稿というのを始めたのだけ
ど、作品はおおむね雰囲気が善良です。そういうほうが読んでて楽
しいんじゃないかと思いました。特に女性にはそういうほうがウケ
がいいんじゃないかと。いや別にモテたいとかそういうんじゃない
ですよ、とかく世の中のマーケットの主導権を握るのは女性でしょ?
ね、だから女性をターゲットにするのは理に適っていますよね?ね?
うんって言ってよ、またいつもみたいに「バカだなぁ」って笑って
よ・・・お願い、お願いだから・・・まぁ僕にも少しくらいは善良な部分
があるのでその少ない切れっ端を無理やり意思の力でひきずりだし
て書いてたわけです。それをやると反動で24時間の睡眠を必要と
しますが。このへんの作品はWeb詩文集「SUNDAY WORKS」「汽車学
エピソード」あたりにまとめられてます。ようやく宣伝できました。


つづく



散文(批評随筆小説等) こんなものを書いてきた 01 Copyright Monk 2005-09-04 19:44:09
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