授業
アンテ


                      16時 @ハト通信

三時間目の授業のあいだに
校庭はすっかり小麦色に染まった
きなこみたいな粉つぶが降りしきるので
外の景色が霞んで見えなかった
チャイムが鳴ると
クラスメイトのみんなは窓に駆け寄って
おいしそうだと言って盛り上がった
窓を開けて粉つぶを手で受ける子もいた
先生の許可が出たので
みんな一斉に運動場へ駆け出して
全身粉まみれになって
おいしそうに食べたり
かき集めて投げつけあったりした
教室に残ったのはわたしと先生だけだった
わたしは忘れてきた算数の宿題を
順番に解いていった
先生は黒板をきれいにして
手をパンパンと叩いてから
カバンから伸縮式の銛を取り出した
それは先が鋭く尖っていて
獲物を逃がさないよう返りがついていた
先生は窓を開けて
運動場にいた子を一人
ひょいと銛で突き刺して教室に引っ張り上げた
顔が見えるより早く
先生はその子の体を丁寧に解体して
一滴の血も落とさずに全部平らげてしまった
同じようにもう一人を銛で捕まえて食べおえると
満足そうにお腹をなでた
わたしは次の問題を解こうとしたけれど
さっぱり判らなかったので
先生に解き方を教えてもらった
生臭いにおいがする以外は
判りやすくてとてもいい授業だった
チャイムが鳴ると
みんな粉だらけの状態でもどってきて
教室じゅうに粉つぶをまき散らした
空いたままの席が二つあったけれど
だれが座っていたのか思い出せなかった
全員で教室を掃除して
机を並べ直すと
空いた席はいつの間にかなくなっていた
みんなは気にもとめずに
四時間目の算数の教科書を開いた
先生に教えてもらったおかげで
わたしは真っ先に手をあげて
黒板にすらすらと答えを書くことができた
頭をなでてもらうと
みんなが一斉にブーイングした
そばに立っていても
先生はもう生臭くなかった





未詩・独白 授業 Copyright アンテ 2003-07-07 03:06:36
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