オッドアイ或いはヘテロクロミア
雄太

 左右で異なる色をした君の瞳が好きだった。その目に映る世界は一体どんなものなのだろうかと考えてみるのも好きだった。とても楽しい時間があの時は確かに存在していた気がする。



 いまとなってはもう、うまく思い出すことは出来ない。



 何がいけなかったのか、知りはしない。ただ、君は現れ、やがて去っていった。ただそれだけの事だ。あの瞳が好きだった。気まぐれなその性格が愛しかった。小さなその身体で、その心で、そしてその瞳で、何を見、考えていたんだろう。それを知ることは結局なかった。



 あれから結構な時間が流れ、いま僕は幸せに暮らしている。結局君の見ていた世界を見ることは、知ることは出来ないままだけれど、それでも僕は幸せに暮らしている。君が、君も、どうか、幸せだったなら、そうなら、いい、と思う。



 少しでも君の世界がわかるかもしれないと、左右で異なる色のコンタクトを入れてみた。青と、銀。君とは違う色だろう。ただ、それもすぐにやめてしまった。どうやら僕には根本的に合わないみたいだったから。



 左右で異なる瞳を持っていた君は、僕の前に現れ、そして、去っていった。



 気まぐれな君がどうかその後幸せな道を歩んでくれていることを、願ってやまない。



 あの、瞳を、愛していた。


散文(批評随筆小説等) オッドアイ或いはヘテロクロミア Copyright 雄太 2005-08-22 09:35:44
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