愛のソネット
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だいだいの色のこおろぎのかすかな声、いたむ右腕をさすりながら届くか届くかとうたう声、女の子はちいさく踏みつぶしてやろうかしらと呟くのだけれど、お月さまも知っている女の子はそんなことはしないと。
ブラジャーの中で乳房が笑っているので、おい静かにしろよと注意すると乳房はよけいに笑ってあら私注意されるすじあいなんかこれっぽっちもないのよ笑わせないで、などとぬかすのでこの女は脱がしにくいや。
天気のいいのを口実にして散歩にさそってみたのだけれど、道ですれ違うすべての交尾中の犬や虫や草花までもがようようおふたりさんアツイねひゅうひゅう、などとからかうのでどうやら手もつなげそうにない。
逆さに吊られた悪い人がのれんのように連なっている一角を過ぎると、見たこともないしあわせな花がいっぱい咲いている場所に出て、ふたりで小銭を出しあってまんなかの自動販売機でコップ酒を買って飲んだ。
窮屈さがとてもいいというのは誉めているのかけなしているのかどっちだ、というのが試験問題だったらこの国もいくらか潤うだろうなんちゃって、などと試験中にジャンクフードを食べながら考えるのはよそう。
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お姫様は千年の眠りからようやく目が覚めたのにもはや肉も骨もさらさら何処かへ吹き飛ばされてしまっていたので、傍らで鼻をほじっていた男に命じた、さあいますぐに一刻もはやく私の全部拾ってらっしゃい。
ねえ私のことあいしてるおいおい勘弁してくれ首筋がむず痒いぜ、と穏便に返したつもりだったのにこのやろう痒み止めなんて常備してやがったもんで、仕方なく首筋にそれを塗りながらあいしてるよマイハニー。
ガスだ紛れもなくガスだ、とても重要な部品がガス漏れを起こしているに違いないと思う、求愛中にそう返されてこれは受諾だろうか拒絶だろうかもしかしてもう一度やり直したほうがいいのだろうかと私は思う。
するりと全部脱がされてしまったけど別に嫌な気はしないのむしろ心地よいかもしれないあなたのその指で私のこころの鎖もほどいて欲しいわ、なんちゃってぷぷぷあははは、女の子が笑いすぎて行為にならない。
お月さまにふたりのあいを誓うの明日になったらお日さまに誓うのねえそうしたら永遠よ永遠だわ、お星さまじゃ駄目なのかい、だってお星さまはいっぱいあるから私いつかふたりのあいを見失ってしまいそうで。
かん高い金属音で交尾をしているかぶとむしをひやかしてみてもむなしいだけだわ奴ら快感の信号も出ていないのだわ顔を赤らめることもしらないのだわ私も明日かぶとむしになればいいのに、ねえ、キスしてよ。
全部捨てて来ました自分不器用っスからいろいろまんべんなく出来ない男っスから裸のそのままの自分みてほしいんス自分しゃべるのも苦手で上手に気持ち伝えたり出来ない男っスから、って、全裸で来ないでよ。
擬音語でしか愛を表現できない人と擬態語でしか愛を表現できない人とがいま出会い恋に落ち手をつないで歩きはじめる、ふたりの背中には夕日、ゆうやけの中ふたり笑いながらきらきらと笑いながら歩いてゆく、
自由詩
愛のソネット
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2005-08-22 02:27:13