〈美術館〉『ドレスデン国立美術館展』(国立西洋美術館)2005/08/18
白糸雅樹

 集光器や地球儀が展示されている部屋の壁にデューラーの銅版画。『星図、南星天』はなんだかデューラーに対する私の今までのイメージをくつがえすかわいらしさ。『ネメシス』は顔が中年を過ぎたおばさんの顔で、体型などもなんだか古代の壁画や土偶の女性を思わせる素敵さ。

 地球儀とかコンパスとかその他もろもろはかたちは好きだけれど、まぁひとつひとつ眺めたのみにて通過。オスマン帝国との関わりの部屋や、中国・日本の陶器などとそれを真似たマイセンを比較し易いよう隣り合わせずつに並べた部屋はまぁ興味深いが、これもひととおり見て通過。

 『イタリア−芸術の理想像』の部屋のマルコ・リッチの四枚の絵がどれもとても好きな感じだった。特に『冬景色』は夜明けだろうか。空が明るくなっていて、手前の枝に絡んだ雪か霜がきらめいて、ひどくそれが固く凍りついて寒そうだ。リッチって今まで覚えていない名前だったが、一緒に並んでいたティツィアーノの人物画よりこっちの方が好きだな。

 同じテーマの次の部屋のカナレットなどの絵は、なんというか、いい絵だけれど特に迫ってくるものもない。でも、こういう絵が部屋に一枚あると、でかい窓の向こうに素敵な風景があるみたいでいいだろうな。

 フェルメールの『窓辺で手紙を読む若い女』は、チラシにも大きく使われている絵。手紙を手に、明るいところを求めて窓辺に寄って立ったまま読み耽っている女性。じっと見ているとなかなか妄想がかきたてられてくる。きっと細かい字でびっしり書かれているのだろうな。仕事かなんかでずっと遠くにいる夫からの便りかな。特に嬉しい知らせとか悲しい知らせという感じではないけれど、淋しそうだ。だけど、愛されている若妻なんだろうな。彼女の背後のカーテン(絵では右側)に反射した光がとても明るい。

 レンブラントの『ガニュメデスの誘拐』を見て、ガニメデってギリシア神話だな、誰だっけ〜?と思い出せず苛立ったのでそこに置かれていたカタログの解説を読む。ああ、そうか。美少年だというのでネクタル注ぐ給仕にされちまった子だったか。ゼウスが鷲の姿でさらっていくとこね。だけど、この絵の男の子はどうみても赤ん坊で、神話とはだいぶ違うな。さらわれたことに責任がない無垢さをあらわすとかそういう意図があるのかしら。それにしてもこの構図、どうみてもレダやエウローパを題材にした絵と扱いが同じだなぁ。そうか、ゼウスってのは女と見れば口説きまくりさらいまくるだけじゃなくて、両刃使いだったのか(笑)

 ダールの『満月のドレスデン』では、月の手前の雲がほんとうに左に流れていくみたい。こういうふうに描けるのってすげぇよなぁ。この最後の部屋の絵は画家の名前は覚えていないけれど好きなものってのが多いなぁ。

 先日ここでやっていたラ・トゥールほど出色の展覧会ではなかったけれど、まぁ満足、満足。お腹も空いたしなんかここんとこ体力ないし、常設展たちには今日はご挨拶しないで帰ろうっと。

                            2005/08/19


散文(批評随筆小説等) 〈美術館〉『ドレスデン国立美術館展』(国立西洋美術館)2005/08/18 Copyright 白糸雅樹 2005-08-19 03:09:31縦
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