きゃらめる 1
アンテ
きゃらめる 1
とけい
1
あさおきて
さいしょに
とけいのふりこをとめる
かおをあらって
きがえをして
おちゃをのんで
くっしん
せのび
しんこきゅう
からだをほぐして
よおおおし
おなかにちからをいれて
ぜんまいをまく
きりきり きり
かたくなるまでまいて
ふりこを
ひとさしゆびでおす
こつこつ こつ
せかいがまた
うごきはじめる
2
かべかけどけいの
ふたをあけて
ふたつのはりを
いれかえてみた
なんど
ごはんをたべても
おなかがすいた
3
とてもながい
ふりこをつくった
アパートのおくじょうの
てすりに
とけいをしばりつけて
したまでおりて
ふりこをおしてみた
ふうぅん
じかんが
ごくちいさなおとをたてた
4
まちはずれで
ちいさなとけいやさんをみつけた
みせじゅうに
ふりこどけいがかざってあった
すすめられるまま
とくとうせきにすわって
こつこつ こつ
こつ こつ
じかんのしゃわーをあびていると
すっかりくるっていた
しんぞうが
いきをふきかえした
5
ちっともねむれなくて
よなかにこっそり
そとへでた
あんまりまっくらなので
さくさく さく
はさみでまるくきりとって
しんちょうにもってかえった
とけいのもじばんに
はりつけてみると
とつぜん
あくびがでた
めをとじたしゅんかん
ゆめのなかだった
6
まちのまんなかで
とつぜんそのことにきづいた
どっちをむいても
とけいがみあたらなかった
だいじょうぶ
みずのなかでだって
しばらくはへいきなんだから
じぶんをなぐさめると
よけいにしんぞうがはやくなった
あちこちさがしまわって
やっとのことで
よさそうなかべをみつけて
きんきゅうようのちょーくで
とけいをかいて
ちっ ちっ ちっ
となえると
ようやくおちついた
やれやれ
つぎはどこでいきつぎをしようか
けっしのかくごで
かけだした
7
ひとさしゆびで
はりをじゃましてみた
とけいのなかで
なにかがきしんで
とつぜん
もうひとつのはりがまわりだして
ゆびをはさまれそうになった
いちどはひっこめたゆびを
もういちど
ためしにちかづけると
じほうが
ぼんぼんなった
8
こんこん
とびらを
のっくしてみても
へんじはない
こんこん
きょうは
にちようび
かんしょうしないひ
ってきめたのに
ちょっとさびしい
ぽっぽう
つぶやいてみる
9
はりきって
じかんをつげても
るすばっかりで
むなしいったらありゃしない
ぐちをいってばかり
あーあ
たまには
そとへつれだしてほしい
って
しつこいから
かばんにいれて
がっこうへつれていってあげたのに
あれいらい
くちをきいてもくれない
10
せすじをのばして
おなじほはばで
あるきつづける
こつこつ
こつ
きまったきょりを
あるいたら
きよくただしく
はっせい
それからまた
あるきだす
こつこつ
こつ
いちにちは
はやくもおそくもない
初出:@nifty 詩のフォーラム 4番会議室
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