晴れた朝 泳ぐ
はな 



あっさりとひねりあげては
なぐって
またひろいあげる
泣いていました、ずっと
どうしようもなく 名づけられてしまったものを 


青いねえ

たっちゃんは確か そう言ったのです
お葬式の朝
似合わない黒のスーツで
扇風機のまえに立っていました
たっちゃんは
その日の朝けんかして
大人たちから何度も、ばかだねえと言われていました
それを全部、背中で聞いては
ずぼんを脱いで
どこを見ているのか
ぱんつ姿で
ほこり臭い風に
吹かれていました


たっちゃんの腕は
わたしの腿よりもすこし ふとくて
しんと並ぶ日差しを眺めて
さみしい気持ちだったけれど
ことばはまだ
知りませんでした
ただ何か
ずるいなあって


たっちゃんはじっとして
わたしの手を 痛いくらいの力で握っていて
そのごつごつは真っ赤な血が少しにじんで
わたしのむねは
しゅん しゅん、薬缶みたいなふうで

「ばかだねえ」
そう きっと

あのひも晴れていて


あさが
くるたび


ほしいものが何もないわたしを
たっちゃんはよくばかにして
でも さいきんはちょっと優しいから
あっさりとひねりあげては
笑います


未詩・独白 晴れた朝 泳ぐ Copyright はな  2005-08-09 16:29:57
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