所在なし
yamia
肉体は抜け殻で
ただの入れ物でしかない
・
つなぎ目がとうに錆び付いていることは
重々承知の上で
真実とかいう胡散臭いものを探す旅に出る
センチメンタルな接着剤で
仮止めされても
ただの気休め
持ちこたえる時間はたかが知れているだろう
それでもあてもなく彷徨い
たどりついたのは
入り口も出口もない大きな水たまり
周囲は微妙にぬかるんでいて
境界は曖昧だ
泥で重くなった靴を気にする必要性ももはやなく
核心へと歩み寄り覗き込み
ささやかな期待に胸を踊らす
自分が何者であるかを
暴いておくれ
深くて澄んでいて
真の姿を映し出してくれるはず
・
期待はただの期待に過ぎず
あっけなく裏切られる
後悔と諦めとが折り重なって表面を被い
あたかもそれがすべてのような顔をするので
何も確かめられやしない
諦められずに
怪し気な呪文を唱えて
そいつらを消し去ろうと試みるが
ことばは宙を虚しく回転するだけ
不確かな稜線をたどり続けるも
濁った水がつなぎ目から侵入してきて
腐食は一層進むばかり
からっぽのはずの入れ物にも
実は記憶だけは詰まっていたらしく
水たまりに溶け出して
その形をわずかに変化させる
そこはそんなもんばかりが
垂れ流されてできた場所なのかもしれぬと
ふと思う
記憶はウソツキだ
だからそこに真実を探しても
多分無駄な話
・
旅の終わりはどこにあるのだろう
未詩・独白
所在なし
Copyright
yamia
2005-08-06 14:48:30