しっぽについて
せんたく板


人が言葉を手に入れることができたのは、しっぽを捨てたからだ
ちっぽをつてたからだ
しっぽを捨てたかわりに人は言葉を獲得したのである
それまでのしっぽは心を表現していた
怒りや喜びを表すことができた
ちなみに心は人だけのものではないのでね
また、しっぽのない生き物には心がないように感じられる
そう思うのは気のせいか
人になる前の生き物がしっぽを捨てた
決定的な出来事があった
それが人の進化の過程にあったのだ
あるいは、しっぽを失った人になる前の生き物が心を仲間に伝えるために
言葉を手に入れた
文字は全て線で表されている
しっぽは線の思想を体現している体の一部である

僕は失われたしっぽのことを考える
しっぽがどのように動きたがっているかを考える
もうそのしっぽは僕のものではないから
しっぽの本当の気持ちなんてわからない
僕はできるだけしっぽの動きをそのまま表現したくなる
たとえばそれは犬のような気持ちで
ときには、僕はなにも心を表現したいとは思わなくなる
猫のように
失われたしっぽのことを考える
あったはずの尻尾のことを考える
言葉を必要としていない心の領域で考える

ときどき僕はしっぽを持ちたいと思う
あればいいのにと思う
そうすると
もっとややこしい人間社会になるのかね
おしりのしっぽのあったあたりを手で触れてみる
何もとくに感じない
なんだか微妙な具合だ
てれるね
複雑だ
しっぽを触わられると嫌がるのはそのせい?
しっぽがない
どうしてしっぽがないんだ
しっぽがない
うしなわれてしまったのだ



散文(批評随筆小説等) しっぽについて Copyright せんたく板 2005-08-05 19:01:58
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