きみに
竹節一二三

おふろに一緒にはいってくれるきみへ
にくにくしいねといったときに
なぐらないでくれないか
わたしはこんなにほねほねしいのに
といったときに
胸のふくらみをつつくのをやめてくれないか

とりがらみたいね ときみはわらい
わたしはきみのふくふくしたゆびさきに
あわあわとわらう
やわらかいゆびさきも
ふるえないてくびも
あたたかなからだも ぜんぶ
うらやましくて
わたしはきょうもきみに
にくにくしいね とささやく

ごはんを一緒にたべてくれるきみへ
もっと太りなさいと きみの嫌いな野菜を
わたしの皿に移すのをやめてくれないか
わたしの嫌いな肉をわたしの皿に多めに入れるのを
やめてくれないか
きみはわたしの頬をつまんで
やさしく わたしはにんじんが嫌いなの とつぶやく
わたしはきみの皿に細かくたまねぎを移しながら
わたしはたまねぎがきらいだよ とつぶやきかえす

一緒に散歩をしてくれるきみへ
つないだ手をポケットにねじ込むのをやめてくれないか
とてもはずかしくて顔を伏せてしまうんだ
あんたの手は冷たいのよ ときみは笑うけれど
わたしははずかしくてたまらないんだ
お店の中ではぐれてしまったときに
大声でわたしの名を呼ぶのをやめてくれないか
だって聞こえないでしょう とふふんと偉そうな顔をして
きみはいうけれど
わたしははずかしくてたまらないんだ

けれどすこしだけ うれしいんだ

一緒に生きてくれるきみへ
いつも ほんとうにありがとう
きみがみていない場所でないと
こんなこと 恥ずかしくていえないんだ
いつも ほんとうに ありがとう


自由詩 きみに Copyright 竹節一二三 2003-12-18 01:49:24
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