おとといきやがれ!
umineko

ある朝
会社までの道を急いでいると
見慣れた制服姿
サルサ銀行のお兄ちゃんだわね
あ、そ、と思って通りすぎようとしたら
突然制服は
深々とお辞儀をして
申し訳ありません、と
わたしに向かって謝った
なんのことだかわからない
しかし彼は真剣である
まなざしに宿る光がホンモノだ
仕方がないので
そのわけを聞いてみた
どうやらわたしは
今度の週末サルサ銀行に行って
振込やら通帳記入やら両替やらなんやら
たまりにたまったこもごもを
その兄ちゃんの窓口にぶちまけたらしい
そのあまりの繁雑さに
おまけにリラへの両替という難問も手伝って
それでも彼は一生懸命
あっちの机こっちの担当に聞きまくって
そうこうするうち
昼休みをつぶされたわたしがブチ切れてしまい
おとといきやがれ!と 
叫んだらしいのだ
「だからこうして
 あやまりに来たンです」
なるほど
時空も超えたか
わたしの妙な感慨などおかまいなしで
なおもくどくどと反省と感傷は続く
しかしわたしには
わたしの朝とわたしの一日があるのだ
突然の時間旅行者の
馬鹿丁寧な言い訳など聞いている暇はないのだ
貴重な時間を奪われたわたしは
ついに再び大声で叫ぶ
おとといきやがれ!
すると
彼はゆっくりと
白いもやに包まれて
だんだん薄れてゆくではないか
ああ
なんということだ
そういえばおとといコンビニで
見知らぬ青年が話しかけてきたのだった
「今度は許してくださいますか」、と
立ち読みをしていたわたしは
完全無視を決め込み
ウィンドゥに写った姿に向かって
おとといきやがれ!と
つぶやいた気がする
顔だちまでは覚えてないけれど
声の感じがどことなく似ていないか
ああ
そういえば先週土曜日に…  
 
 
 

  


自由詩 おとといきやがれ! Copyright umineko 2005-07-27 13:31:02
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