寓話 不可解な死 2
クリ

トニーはテストの最中にたった一本の鉛筆を落としてしまった
音の大きさに比して精神的な衝撃は相当なもので
クラス全員の視線がトニーに集まった
鉛筆はケレケレケレとどこまでも転がって行く
軍事国境線を越えてようやく止まった
鉄条網から50センチ
「アンソニー、行くんじゃない!」
バウチャー先生の静止する声も耳に入らなかったのか
トニーは国境線の手前に跪き
鉄条網の隙間から手を伸ばし
貴重な鉛筆に触れたとたんに
一斉射撃を浴びて即死した

                Kuri, Kipple : 2005.07.09


未詩・独白 寓話 不可解な死 2 Copyright クリ 2005-07-09 21:23:02
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