街
塔野夏子
埃っぽい風が立つ
ざわめきの中浮かんでは消えるように
表情たちが行き交う
楽しげでも悲しげでも
逃れがたい虚ろに巣喰われたまま
とめどなく流れつづける
呼び声や歌声が
ざわめきに尾を引いて入り交じり
この混沌をますます生ぬるくもの憂くする
空は乱雑に切りとられたまま
仕方なく置かれたように
頭上にある
街はずれの丘の上に塔
鐘の音
そしてわたしはあてどなく
愛するひとをさがして歩いていた
自由詩
街
Copyright
塔野夏子
2005-06-21 18:21:03