意外とバイパス
木葉 揺

アホの振る舞いは
小さい頃に母に叩き込まれたから
自然と所作として表れる

でもバイパスを渡るときは
高校球児のようにお守り握って
全てを忘れて決死の勝負
渡りきって汗をぬぐい安堵感いっぱい

で、そんなとき
さとみくんのマネがしたいのか
テレクラティッシュの要領で
横からフッと二本指で
名刺を差し出し微笑むサラリーマン
お昼過ぎにはある話です

私は慌てて自分の身なりの汚さを恥じて
「カクカクシカジカピーポーポー」
というと
「そんなことは見りゃわかるよ」
と改めて徹夜で読破した参考書の威力を知るのです

だから一つのデータとしての「営業」
に対し
普段の口のあけ方は○でなくて△なんだ
そう力説したところで

ごろん!

と丸め込まれて
そのまま近くのスタバまで転がされてしまいました

だけどやはりコーヒーを一杯注文すると
参考書の56ページが気になり
彼のサクセスストーリーが進んでゆくほど
滑車の実験の図を自分で描いてみたくなり
「あの時どうして授業をさぼったのか」
悔やまれたのです

ずずず・・・

コーヒーがかなり減りました
とうとうお話は「恒星と惑星の違い」に展開し
耐えられず半泣きになって

「そのオチだけは言うなーー!!」

と叫んで
薬指にフィンガーパームしておいた五百円玉を
コップを通り抜けるマジックをする間もなく
叩きつけて飛び出しました

後はもう、つながれて暮らしてる日本のワンちゃんの散歩

勢い余って、方向を失って
グルグル回って
おしっこが出る限りマーキングを続け
自分のテリトリーを明確にしておいたのです

ただ、予想外の道に出くわし
涼しさに誘われて
つい書店に入ってしまったのがいけなかった

見つけちゃったんですよ、「中学生理科」
もうこれ以上
手を出しちゃいけない分野なのに


自由詩 意外とバイパス Copyright 木葉 揺 2005-06-16 22:30:59
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