夜になると、魚は
いとう
夜になると
魚は目を閉じて
消えていく泡の行く末を思う
消えていく
自らの姿に思いを馳せ
静かに
目を閉じている
夜になると
魚は目を閉じて
自らの見ることのなかった風景を見る
魚は野の花を知らない
魚は四つ足を知らない
木漏れ日も
雪の冷たさも
風に煽られる木のしなやかさも知らない
夜になると、魚は
えら呼吸の刹那に溢れる深海の夢を一粒
そっと放り出し
立ち昇るその姿を見つめる
尾びれも背びれも
動かすことなく
消えていくその姿に
思いを馳せて
目を閉じたまま
闇の中でもう
朝を迎えることなく