ゼンマイ仕掛けの飛行機が
yuma
退屈を嫌う甥が「私の相手」に飽きて
玩具箱からソフトビニール(そしてきっと抗菌使用)の怪獣を乱暴に持ち出した
嬉しそうに昼前にはもう遊び尽くしたトミカ製のプラレールと私を押しのけて
甥が向かった箱庭は甥が遊ぶにはどうして懲り過ぎなようにも思えた。
窓を見れば贋物臭い飛行機が空を飛んでいる
子供の落書きのような嘘の無い嘘臭い青が私の詮の無い空想を助長していく。
戦車に無理矢理詰め込まれたLEGOの警官達が高らかに正義を叫ぶ。
戦車の砲台は最新式の巻きバネで打ち出されたBB弾の威力は凄まじい。
午前中に私が体験済みだ。
怪獣が戦車を踏み潰す。誇らしげに傾いて叫び声を上げる。
戦車の脇をすり抜けてチョロQがせわしなく逃げ回る。
逃げ惑う人々の中にはきっと正義のヒーローや怪人だって混じってるんだろう。
抗菌使用には菌はおろかライダーだってショッカーだってかなわないんだ。
(なんならスパイダーマンだって。)
電子音が鳴り響く。
超合金と銘打たれたヒーローが待たせたなとばかりに秘密基地から現れる。
きっとあの秘密基地は「公然の秘密」なんだろうな。と思う。
可哀想に悪の秘密結社も見てみぬ振りで大変だ。
ヒーローは何時だって卑怯なほどの奇跡と偶然が味方する。
喩え怪獣が放射能を放ってもそれに勝る勇気で打ち勝つのだろう。
ヒーローは怪獣に勝てても甥には勝てない。
上手いこと持ち主の目を盗んだゼンマイ仕掛けの飛行機が
窓の隙間を摺り抜けて青白い空へと落ちてった。
何かの間違いで私の甥の手元にある本物の飛行機の中で
乗客たちだけが妙にリアルに現実を理解していた