俗なる散文よ、幸せなる詩よ
杉原詠二(黒髪)

愚かな過去よ
眼を閉じよ
愚かな人よ
口を閉じよ
しゃべりたいなら
心の中でしゃべれ

この空にこそ
偉大な価値がある
わたしの夢を運んでくれるから

夢なしでは愛は成り立たない
現実だけでは俗に塗れた悲しい思いになる

だから今ここで
わたしは詩を紡いでいる
散文へのあきらめを
ニュースペーパーの余白に綴って
歌のような言葉を自分の声に響かせて
花園での戯れと
深静たる湖での沐浴と
緻密な数の計算と
苦行をやめた後の幸せへの眼差しをもって
永遠の詩を書こうとしている
散文で愛を告げられるだろうか
悲しみをのせた小説が
何百万部売れようとも
せいぜい性的な露出で耳目を集めるだけではないか
わたしには似合わない

歌を忘れたカナリアは
何のために生きるのでしょう
ポエジーなき散文は
原子爆弾の破裂と等価でしょう
狂った公害は
生まれた意味を破壊するでしょう
精神を侵す日常は
犯罪心理に辿り着くでしょう
わたしたちは
歌を歌わなければ
気がおかしくなってしまうのです

あの人だけは美しい歌を歌える

すべての時が徐々に詩に変わっていく
あなたとの愛が
史上最高の詩の中で結実する

わたしのユートピアにさよならを
本当のパラダイスを迎えるために
限りない美しさを持つ生き物たちが
煩悩もなく周りに集まってくる
わたし自身の愛よ
わたしを裏切ることなかれ
わたしに嘘をつかせるな

愚かなるものが
膨大にはびこることに
憐みの涙が落ちる
神仏よ
あなた方を戦争に利用するような人達を
どうか赦したまえ

わたしはまだ怒りに囚われているが
きっと念ずれば
どんな荒野にも
花は開く
わたしの涙が
花びらを濡らす
わたしは嘆息して
生命の価値の中で
ゆっくりと眠り
朝を待つ

もう決して
くりかえさぬ
過ち
皆がそう
唱えれば
世界がそのように
皆で
変わっていく

散文が自我を作り
自我に命じられた暴力が命を破壊する
その連鎖を止めるために
詩を詠み
歌を歌うのだ


自由詩 俗なる散文よ、幸せなる詩よ Copyright 杉原詠二(黒髪) 2025-08-06 21:21:32
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