凍った雨
リリー

 西風が吹きつける
 白い塗装の剥げかけた
 木枠の窓

 嵐の前の雨が胸をつき
 かえるべき場所を見失った心は
 ぐるりぐるり
 過去の幻をめぐるだけで
 固くなる

 あなたはあたしの歌を奪い取って
 凍えた心臓に押しつけたから
 妙に気が弱くなって
 
 薄ら涙のにじみに
 ひん曲がる
 アイスコーヒーの氷
 燃えつきた想いを揺り動かすのは残酷

 窓枠に跳ねる雨音
 消え入るような笑い声
 外に、ひとの姿は無く
 花壇で満開のカンパニュラ

 打ちつける愁いの滴よ 
 ひたすらに降れ
 朱夏の黄昏のなかで
 
 


自由詩 凍った雨 Copyright リリー 2025-07-07 18:20:52
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