コールタール
りつ

お父さんは「泣くな!」と言った
それから泣かなくなった

お父さんは「意気地なし!」と言った
怖いと言わなくなった

殺した感情
言えずに飲み込んだことば

お母さんの声は神様だった
逆らったことなど1度もない
従うことが当たり前だった

強制的に割りきり
言わなかった不平不満鬱憤

そんなものが自分にあるとは
認めたくなかった

美しいこころの私で居たかった


醜いもの汚いものは
澱として沈澱し
上澄みだけを掬ってるうち
澱は形を喪い
もはやヘドロを通り越し
コールタールのようにベトベト
(寧ろヘドロが良かったか?)

どっちも同じだ
ヘドロは有機肥料になるし
コールタールは
アスファルトと混ぜれば
道になる

偽悪はいくらでも書ける
偽善だって
幸せだって
犯罪思想だって
いくらでも書ける

剥き出しの未熟なことばなら
いくらでも書ける

たった一つ
私が詩に課したこと
ありのままを正直に書くこと
どんな風に見えるかなんて
気にしたこともなければ
これからも
気にすることはない

もういいよ
私は私を貫くだけだから


自由詩 コールタール Copyright りつ 2025-07-05 22:18:14
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