(15才の詩) 風景画
リつ
西日に煤けた金の部屋で
畳についた猫の爪痕から
陽笑がたちのぼっている
外は街の喧騒
背中に疲れを背負った人たちが
道を急ぐ
さらりと風がやんで
1人の男の人が
夏の日の汗を拭きとった
少女はくつをける
くつをけって 明日を決める
赤いゴムで結んだ
髪がおどっていた
ほほが上気して
夕焼けととけあっていた
1匹の蚊が
その日の満足を味わっていた
毒のストロウを
赤い果汁が伝わってゆく
ふらふら飛ぼうとした時
大きな手でピシャンとやられた
赤い花がぱっと咲いた
日は落ちて
陽笑も畳に凍りついた
ほの暗い街に
明かりがともる
すべて 明日のために
昭和58年7月24日 発行