私と詩
栗栖真理亜
詩は絵画である。
白いキャンバスの上に色とりどりの欲望を彩った芸術である。
この作品を見れば一目で、願望も希望も絶望も一際妖しげな光に満ち満ちている事に気付くはずだ。
彼らは普段息を凝らして、仮面の下に潜んでいる。
日常という、一見なんでもないような出来事から劇的瞬間のエキスを摂取し、いつか日の目を見る日を夢見ているのだ。
このように待ち侘びる彼らを私は言葉という筆に乗せ、極彩色の絵の具として塗りたくる。
すると生き生きとした彼らの表情が現れるのだ。
まるで言葉が最初からそこにあったかのように動き出し、リズムが生まれ、創造の息吹が感じられるようになる。
まるで今まで抑えられてきた鬱積をすべて吐き出すように、彼らはとたんにお喋りになるのだ。
私はそれを写し取るだけに過ぎない。
まるで彼らに操られるがごとくにありのままの感情を描き出す。
これが私と詩との離れがたい関係なのである。