私はバーベキューが嫌いです
初代ドリンク嬢

 そのむかし、とーっても若かった頃、何を血迷ったのか「仲間を作ろう!」と決心したことがあった。「やっぱり仲間といえばバーベキューよね」と数少ない友人に頼み込み、仲間集めをしてもらった。私はとても頑張った。お知らせの紙も作って、段取りも必死にして楽しい時間を過ごせているはずだった。二回で「仲間作り」はあきらめた。やっぱり無理だった。それなりに楽しかったけどすっごく疲れて、楽しいより、疲れた。大体、バーベキューってみんな誰の肉にも自分の箸で触るもん。やだよ。気持ち悪い。
 結局のところ、気持ち悪いのだ。みんなのバーベキュー。私の肉じゃなくてみんなの肉。「それ、私の」っていえない。みんな知りあい、内輪の「だれそれって知ってる?」とか、自画自賛の褒めあい、ダメだし、とかは他人がなめた肉を食ってるような気持ち悪さを感じてしまう。そして、どこにでもリーダーさんがいる。ダメだしができるのはリーダーさんだけで、リーダーさんは肉を仕切れる。次は何の肉を焼くかとか、焼きそばのタイミングとか。バーベキューは仲間しか入れない。知らない人が来ていきなり参加したら追い出されるものね。
 今でも、時々仲間作りの欲求が出てきて時々は試みたりする。
 今度、地元で企画物の芝居がある。そのプレイベントにリーディングで参加することになった。一回だけ打ち合わせに参加した。とうとう一言も発することなくとっとと帰ってきてしまった。う〜ん、失敗。
 先日、リーディングをする若者を見た。意識がすーっとひいていくのがわかった。なにかをとても重要なことのように話していた。途中で退席。やっぱ、ダメか。
 そうだ、私はリーディングといっても今まで普通にチケットノルマさばいてバンド扱いで出ていたのだから音関係なら大丈夫かも・・・。
 友人にパンクバンドの打ち上げで盛り上がって撮影した写真を見せてもらった。目の前にはホルモン焼き。「ホルモン焼き」、おー、地元のパンクスだ。金髪だったり、タトゥを入れてたり、しかも普通のにいやんもいたり。酒でみんなの顔がテカテカしてる。あ〜、私、ホルモン嫌いなんだよねえ。内臓だもん。
・・・・・・・・。
私は懲りずに仲間の皆さんを横目でうかがっているわけなんだけど、どこでもいいってわけじゃあない。私はやっぱり、自分の肉は自分で、自分のペースで焼いて食べたい。自分の焼き場があるバーベキューなら喜んで参加するというか、参加できると思う。
 でも、本当はみんなのバーベキューが気持ち悪くなくてうれしい人になりたいなあなんてちょっとあこがれているんです、わたし。


未詩・独白 私はバーベキューが嫌いです Copyright 初代ドリンク嬢 2005-05-23 23:53:54
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