赤いガラケーとテーブル
番田 

夜風が急にぬるくなったこの頃。街に時々出かけても、スタバに入ることはめったになくなった。そもそもあの、生クリームの味が何とも。だからドトールに行っているわけだ。それはストレートでシンプルで、安かったからで、逆に味がやや薄かったベローチェには行っていなかったけれど、でも、流石に、コンビニレベルに薄いというほどでもなかった。しかし、ベローチェには行かずにドトールに僕は行っていた。この街で、店同士の距離はそんなに離れているわけではないが、ベローチェはやや路地の奥まったところにあった。まるで、そういった場所が持つ雰囲気を知っているかのようにして。しかし、あえて行く気にもならず、そこには行かなかったが、昔は行っていたことを覚えていた。店員の顔も、何となく覚えていた。そこで、誰かに英語を教えていた客もいた。僕は赤いガラケーを見ていた。まだ、スマホではなかった。スマホもいずれ違う何かに置き換わるのだろうか。未来については何も知らない。過去の記憶だけがおぼろげに頭の中にはあった。だけど変わるのだろう。夜風は、雨を連れてくるのだろうか。頭を天気予報で見た雨マークがよぎった気にさせられた。いつも外に出るときにはそうしていたから、今日も、外に出る時にはそうしていた。しかし人の顔というのはいくつになっても忘れられないものだ。僕が覚えているようには、相手が覚えているのかどうかは知らないけれど、夢の中で今は存在しない、その、誰かと遊ぶことはできた。でも、地元の野球チームに所属していたクラスメイトは、あんなに、なぜいつも必死だったのだろう。彼らは、僕らとは草野球で遊ぼうともしなかったけれど。彼らとは同じ遊びをしていても、いつもどこか隔たりがあったりした。


散文(批評随筆小説等) 赤いガラケーとテーブル Copyright 番田  2024-06-12 01:46:52
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