みっつの渡り
AB(なかほど)

あの夏が来るね
とつぶやきながら
それはもう
来ないことを知ってる
同じ空じゃないこと
同じ雷雲じゃないこと
同じ夕立じゃないこと
同じ僕たちじゃないこと
あれが初恋ならば
はじけてった気持ちは
カルピスじゃなくて
ミリンダレモンライム
フェンス沿いの舗道
はじけた
ミリンダレモンライム



見えているものも見ないで
見えないものばかり探している
そんなふうに季節が過ぎて
あなたは
どこにいましたか
あなたたちは
どこにゆきますか
わたしは
さみしくて
わたしはわたしたちは
という言葉を投げかけながら
あなたたちからも
消えてゆくのかな



昨日の夜と新しい朝と
越えてきたいくつものこと
少し通勤時間をずらしたぐらいでは
気分は晴れるものではないけれど
流れる景色に
少しだけしがみついてみる
それは
セピア色の絵に誰かの胸がふるえるように
しゃがれ声の歌に誰かの胸が痛むように
抱えているものに
すぐに気づいてしまえる君たちが
うつむくことはない
うつむくことはない
そんな世界へ
景色は流れている
流れているのだから






自由詩 みっつの渡り Copyright AB(なかほど) 2023-03-23 17:15:07
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