どこかで明日が
由比良 倖

視界が、壊れてしまった、
味のしないジュースを飲んでいる、
誰も隣にいる感触がしない
私は街外れで明日を迎えている
私は街外れで今日を終えている

空は記憶喪失の色を、
見えない虫の羽音で知らせる、
私の内蔵は赤くて重い、
「誰も私を愛していない」
(そうだろうか?)
「どうだろう」靴底に、
虫の羽の音、どこまでも
壊れた自販機、自販機、自販機…

病院に来る、
死なないことが生きることの秘訣、
定義、誰も直視しないための、
誰も死なない明日を保障するための

ところで明日は来る、
私は昨日今日を迎えた、
今日世界が終わりでも、明日世界が終わりでも、
昨日で世界が終わりでも、
相変わらず信号は瞬き続ける、

「誰も私を愛していません」
「そうですか?」
「そうです」
「誰も?」
「誰もがです」
「その通りです」

私は神経の非効率に従って、薬を投与される

幸せじゃない、楽しくない
私は、世界の外れに不法滞在する

誰も私を直視しない、医者は定義し
注釈に笑う、私は笑った私を
ボールペンの先で無限に潰していく、
私は笑った、私は笑った、私は笑った…

ヘッドホンを着ける、

どこかで明日が始まる、
どこかで明日が始まる、
どこかで明日が始まる、
どこかで…


自由詩 どこかで明日が Copyright 由比良 倖 2023-03-21 21:19:05
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