沢庵の尻尾
あおば


切り刻んだお新香
にたにたと醤油をかける
薄化粧の私の娘
二十歳が匂う
裸鰯は漁らないが
花柄の帯を締めた
固い絆の海女たちと
今朝も鋭い磯笛を
吹く

ブリキの潜行艇に乗り込んで
潜ったままで上がれない
若いままのミッキー
マウス
退屈な金網デスマッチを闘う
鼠小僧次郎吉と少年探偵団員は
へとへとになっても
どこにも行く当てがなく
罅割れた櫓の先に屯する
日当たりの良い
アシナガバチを眺め
腹が空いたと握り飯を
懐から取り出して
引っこ抜かれた
尻尾の先にも堅い毛が生えて
怖くて誰も近寄れないくらい
貫禄があったらいいなと
互いに慰め合っている

義を失った弱兵卒は
集団で民を犯す愚を厭わない
何とも情けない光景だ
沢庵の尻尾を囓りながら
いいおんなになってしまった
私の娘は
いまでも
そんなことを考えている


未詩・独白 沢庵の尻尾 Copyright あおば 2005-05-08 21:13:50
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