無垢な悪食の旗の下に
ただのみきや

鏡の姿に名前を付けて
おもねる風
抑揚のみの面差しに祈りはなく
わたしはわたしを分類する
嘔吐する
海はしきりなしに
ほぐれてゆく死者の掴み切れない
ほほ笑みのにごりを
静かに見送る唇の
数歩に満たない後悔が
殻に包まれた嬰児を流す
刻々と
爪を立てる術もなく
たなびくスロープ
表裏の区別はない
回転する
真っ赤な果実は延々と
剥かれながら香りながら
盲いたロウソクの群れにくべられる
待針の眠るベッドで
腰に手をまわした
可視化されない愛情のきざはしに
黒い骨と化したもの
あなたのパンにはさまれて
夜の眩暈は聞く
食前の
祈りに満たない雫ひとつ
朝明けの供物のころに
分離できない
悲喜が染み痕を残すのを
冷めてゆく瞼の軋みが
最初の投石を捉えた瞬間の
特定しえない誰かの膝
一羽の鳥を捻じるような


       
               《2022年12月31日》









自由詩 無垢な悪食の旗の下に Copyright ただのみきや 2022-12-31 13:11:03縦
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