すべてはじめから
ただのみきや

低い天井に音楽が響く
裸の天使の鳥籠のよう
ひりひり見開く傷口
冷凍肉のかたまりに
ガラス金属プラスチック
カラフルな鋲をボウルいっぱい

焦点を拒む視線
ただ瞳の中にゆれる灯が
焦がす空気のくちびるに
ふれる指先は蝶のよう
つかまえられない残像との戯れ
灰をまさぐる祈りと共に


薄暗闇に街灯のよう
雪を被ったナナカマド
たわわな赤に触れる仔の
ひとさし指の切なさを
鴉がおおう夕間暮れ
頬は端境の樹木に似て

街にかかった大きな月も
離れて上れば小さく見えて
そぎ落とせばそぎ落とすだけ
人であることの赤裸々
頭蓋をこじ開けて仰ぎ見る
降る羽根黒く血は青く


ひとつの死に群れる虫
静けさも目に騒がしく
花火のようなことばなら
照らす頬も巡りが良い
だが風が窓を鳴らす夜
出口を求める死者の声は

鳥籠の中に自由は住まい
見つめる者が籠に囚われた
軟膏と香油の中で溺れている
癒すべきは恥部と肥やし続けて
置き去りにしたあの影は
きみの創作でわたしじゃない


眠りは老婆の姿で訪れて
わたしの夢を吸い若返る
水の周りをさまよって
出口を感じて持ち出せない
会話を誰かとかわしている
翼のない背中を咬んで



             《2022年12月17日》










自由詩 すべてはじめから Copyright ただのみきや 2022-12-17 14:23:50
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